開業届と青色申告の認識
[2021/11/02]ページ更新
フリーランスや自営業、副業など個人事業主として活動する場合一度は耳にする開業届、青色申告。
提出することも、その理由も知らない人が非常に多いと思います。開業届、青色申告を申告を行うとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
Contents
開業届と青色申告
個人事業主として開業する際の行政への届け出が「開業届」です。
開業届の提出は、『私は個人事業主です』と税務署へ届け出する手続きであり、個人事業主となった際に、税務署に届け出ることは法律で義務付けられています。
このときに使用する書類が「開業届」といいます。
また、青色申告で確定申告を行うためには、『青色申告承認申請書』という届け出を行い、税務署に青色申告が承認される必要があります。
提出書類の概要
正式な名称は『個人事業の開業・廃業届出書』、『所得税の青色申告承認申請書』となります。
副業では雑所得でも事業所得での申告は可能ですが、継続、反復的に事業的規模で営んでいる場合は提出したほうがいいでしょう。
フリーランスや副業でも、個人事業主として活動する際には、開業届を出す必要あるってことか。
事業所得と雑所得
年の途中で開業届を提出したけど、実はそれより前から事業実態があるという方も多いとは思いますが
収入を得ているのであれば、開業届に記載した日付に関わらず実際に事業を開始した日付から申告を行いますが、事業の規模や実態によっては、『税務調査で青色申告も一緒に否認される』可能性があります。
事業所得と雑所得の認識についてカリキュラム記事でまとめていますので、こちらのカリキュラム記事で事前に認識をアップデートしておきましょう。
副業か専業か、事業規模や生活実態とかいろんな要素があるから一概に言えないんだね…!
それぞれの提出タイミング
個人事業の開業・廃業届出書
事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内に提出する必要があります。提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
開業日はいつにすればいい?
開業日は、事業を開始した日を記載します。しかし、お小遣い稼ぎで試しに始めたけど規模が大きくなってしまい、『事業としての開始日』をいつからにすればいいか判断に迷うという人も多いのでないでしょうか?
この場合は判断が困難なため、その内容が同業種であればお小遣い稼ぎを開始した日付で記載するのが一般的です。
副業などから徐々に事業規模として大きくなっていった曖昧な状況の場合、ご自身が事業としてやっていくと判断した日を開業日にしても良いですが、開業日以前の収入は申告不要というわけではありません。
青色申告承認申請書
『青色申告で確定申告をする年の3月15日』まで、『その年の1月16日以降の開業日を指定している場合は、その開業日から二ヶ月以内』のどちらかの期限で提出しましょう。
翌年の確定申告を行うタイミングで提出しても適用できないので、青色申告を検討している方は速やかに申請書を提出しましょう。
基本的には『開業届記載の開業日から2ヶ月以内』に出せばOKだね!
新型コロナ感染症による延長申請
2020年~現在にかけて新型コロナウイルスによる外出自粛など、事業者の活動に多大な影響を与えていますが、それは税務署の手続きも例外ではありません。
確定申告自体も延長申請による対象となりますので、コロナに感染したなどの影響を受けて提出が困難だった場合は税務署に確認を行って申請を出すのもいいでしょう。
但し、所轄の税務署ごとに対応が全く異なる為、納税地の税務署に確認することが一番です。整合性が取れなかったり、虚偽の報告を行うと申請が通らないので、事前に要件を確認しておきましょう。
『災害による申告、納付等の期限延長申請書』という書類を提出することにより、開業届や青色申告承認申請書、確定申告書類の延長申請が可能です。
地域ごとで、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの有無が違ったり、実際の事業状況で税務署が承認するかどうかは変わってきそうだね!
税務署の職員の方の自己判断で全く受け付けてくれないというケースもありますが、その場合は必ず上席の方に取り合ってもらうようにしましょう。
・スマカクご利用者の向けに無料の開業サポートを行っています。地域の税務署により対応が異なってくるので保証は出来ません。
・窓口で受け付けてもらえなかった場合は、その場では提出せずに一度持ち帰るようにしましょう。
副業でも開業届の提出は必要?
副業の場合は開業届けは提出不要と誤認している方がたまにいますが、所得税法第229条では本業の場合のみと限定していないため、副業でも提出が必要になります。
ネット上でも身近な方でも、誤った情報として『開業届の提出の有無』で確定申告をするかどうかを判断している方がいます。
しかし実際には、事業を営んでいるかどうかの実態が重要となります。
副業でも、収入を得ているのであれば確定申告は必要となり、『開業届を提出していないから申告しなくていい』という解釈は間違いですので注意しましょう。
開業届を出さなければ必要ないってどこかで見た気がするけど、これって間違った情報だったんだ…!
副業や個人事業主に境界はない
「開業届けに記載した日付から確定申告すればいいんですか?」
「今までは副業の認識で、開業届に記載した日付からが個人事業主ですよね?」
このようなご質問をよくいただきますが、この認識は誤りで、申告漏れとなりかねない解釈なので注意が必要です。
例え個人事業主として開業日を”6月1日”と記載して開業届を提出していたとしても、『5月以前に収入がある場合、開業日以前の収入も申告しなければ《申告漏れ》』となり、無申告加算税や延滞税などの罰則を受ける可能性があります。
但し、開業届に記載の開業日には、雑所得か事業所得の一定の判断材料となりえるのでしっかりと考えて提出しましょう。
開業日を間違えた場合は?
自身の認識の違いによって開業日の日付を誤って提出してしまった場合、提出済みの開業届を取り下げて再提出する方法が一般的ですが、再提出せずに実際の開業日から申告を開始したとしても罰則はありません。
開業日が変わる場合は、青色申告承認申請書の提出期限内かどうかを確認しましょう。新規事業者は提出期限が”開業日の2か月以内”となっていますので開業日を変更した場合、青色申告が受けられない可能性があります。
開業届と青色申告のメリット
個人事業で独立した際に、開業届を提出することのメリットは複数ありますが、最大のメリットは《青色申告による65万円の特別控除》にあると言っても過言ではありません。
青色申告を行う事業者は、1月1日から12月31日までの課税金額を、翌年の2月16日から3月15日の間に申告する必要があります。
雑所得と比べると事業所得のほうが圧倒的にメリットがあるので、しっかりと要件を確認した上で事業所得で確定申告をしていきましょう。
最大65万円の青色申告特別控除
反復しますが、個人事業者においてこの恩恵を受けないということは絶対にあってはなりません。
というほどに、青色申告特別控除は”最強”と言っても過言では無い節税策になります。
むしろこれだけのためにやってる感あるぞ…!!
その他のメリット
・赤字を3年間繰越できる
・家族への給与を必要経費にできる
・少額減価償却資産の特例が利用できる
・開業届の写しが事業(就業)の証明になる
・小規模企業共済に加盟できる
・銀行口座で屋号を使用できる
税務署に必要な届出書を提出する必要がありますが、面倒だからと言って受けないと大きな損をしてしまいます。
事業開始初年度だと、特に赤字の3年繰り越しはかなり魅力的だね。
事業を開始する準備費用や、勉強するためのコンサルティング費用などで大きく経費が掛かりがちなので、スタートアップの方には必須な特典になりえます。
開業届を提出するデメリット
① 青色申告の手続きは複雑
② 失業手当の対象外となる
③ 扶養から外れる可能性がある
開業届を提出すると大きなメリットがありますが、このようなデメリットもしっかりと把握した上で提出しましょう。
開業届の提出方法
開業届を提出するには、次の3つの方法があります。
①税務署の窓口に持参
税務署の窓口に直接持って行く方法です。窓口に持参すれば、記入漏れなどがあってもその場で直すことができます。
ただし、税務署の開庁時間は、平日の8時30分から17時までとなっているので、平日忙しい場合にはあまり適さない提出方法です。
②郵送
税務署宛に郵送する方法です。郵送を利用すれば、わざわざ税務署まで行かずに済みます。郵便で送る以外に、税務署の時間外収受箱に自分で投函する方法もあります。
開業時に青色申告承認申請をする場合には、「所得税の青色申告承認申請書」とその控えを同封します。
③e-Tax
国税庁のオンラインサービスであるe-Taxにより、インターネットで税務署に申請する方法です。e-Taxを利用すれば、家にいながらでも開業届を出すことができます。
e-Taxで開業届を提出する場合は、パソコンとインターネット環境、ICカードリーダライター、マイナンバーカードが必要で、事前のセットアップも行う必要があります。
以下、手続きの大まかな流れを説明しますが、詳細はe-Taxのホームページで確認してください。
確定申告をe-Taxで提出予定の場合は後から必要になってくるものなので、この際用意してしまうのが楽ですね。
その他注意事項
時間外収受箱に投函する場合
郵送せずに夜間などに税務署に持って行って、時間外収受箱に投函する方法もあります。
時間外収受箱を利用する場合、税務署宛に送る切手は不要ですが、返信用の封筒に貼る切手は必要なので注意しましょう。
控えを同封し忘れた場合
開業届の控えは、銀行で屋号の口座を開設する時などに必要になる場合があります。
もし控えを同封し忘れた場合には、税務署に「保有個人情報開示請求書」を出して写しを発行してもらい、控えにすることができます。
青色申告が取り消しになるケース
青色申告は税務署長が承認してはじめて利用できる申告方法です。承認するということは、一定のルールを守っていないと否認されるということもあります。
せっかく個人事業主の最大のメリットを受けられたのに取り消しをされると、非常に大きなマイナスとなってしまいますので注意しましょう。
事業所得ではなく雑所得として訂正される
副業として行っている方の注意点として上げられるのが、本業の給与収入と比較して非常に小さい規模感で継続していると、事業所得としてみなされない場合があります。
『事業所得と雑所得』のカリキュラム記事にて、どのような状態だと否認されるのかをまとめているのでご確認ください。
税務調査で事業所得が否認されると、取り消された後の数年分の青色申告特別控除も自動的に否認されたりなどかなり痛い目に合うので、事業開始の理屈やその証拠を準備しておきましょう。
後出しで認めないとか言われても困るし、ここは理路整然と説明できるように先に考えておかないといけないね…!
開業届と青色申告まとめ
新規事業者は設備投資を行うため赤字になることが非常に多く、青色申告を行ってない場合は赤字を繰り越すことができません。
青色申告を活用しよう
青色申告の制度は個人事業主の最大の味方です。
赤字を3年間繰り越せるので、事業が軌道にのってきたときの利益を圧縮することが可能となり、青色申告特別控除を利用することで最大65万も控除できるため、所得税、住民税、国民健康保険等の金額も大きく下がります。
長い目でみたら結構な金額を納めることになりますので、開業届、青色申告承認申請書は必ず提出し、青色申告を行っていきましょう。
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