経費になり得るもの:個人事業主の経費完全ガイド
経費の正しい理解と管理は個人事業主の節税にもつながります。ここでは、個人事業主にとっての考え方や経費計上の判断基準、経費計上に必要な書類の他、青色申告のメリットについて解説します。
Contents
必要経費とは

**『経費とは、事業を営むうえで必要な費用』**を指します。確定申告では経費の範囲に迷うことも多いため、まず収入・支出・所得の違いを理解しておきましょう。
ポイント 「収入」から「必要経費」を差し引いた後の残った金額が「所得」
収入とは年商や売上を意味し、所得は利益を意味します。
必要経費の考え方
考え方
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
支出したものが経費として認められるにはこの要件を満たさなければいけないので、雰囲気で経費になるだろうと思っていると実は経費にならないということもありますので、要件をしっかりと確認していきましょう。
重要 ここを理解していないと、後に出てくる言葉がどちらだったか混乱してしまいます。
参考: 国税庁 – 必要経費
売上原価・直接要した費用
総収入金額に対応する**「売上原価」や「直接要した費用」**の金額はそれぞれ別の考え方となります。それぞれ具体的に考えていきましょう。
売上原価
定義 総収入金額に対応する売上原価とは、「売上や製造にかかる費用」であり、売上の元となるもの、つまり商品やサービスを提供するためのコストのことです。
製造業であれば、自動車1台を作るために必要な材料費、人件費、機械の経費などが含まれます。八百屋であれば、野菜や果物の仕入が売上原価になります。
直接要した費用
事業収入を得るために直接的に必要となる支出のことです。これらは売上を生み出すために必要な費用であり、これらを支払わなければ売上を得ることができません。
| 費用の種類 | 具体例 | 経費としての性質 |
|---|---|---|
| 販売手数料 | メルカリやフリマサイトで差し引かれる手数料(売上の8〜10%程度) | この手数料はプラットフォームで販売するために徴収される利用料 |
| 送料 | 商品発送時の配送料金 | 売上を得るために直接必要な支出であり、経費として計上可能 |
判断基準 売上に結びつくかどうか・これがないと売上が発生しない・これ自体が売上の元になっている・これがないと売上が作れませんといった基準をしっかりと抑えておくことが大切です。
販売費、一般管理費、その他業務上の費用
販売費や一般管理費は直接的に売上に関連していないため判断が難しい所となります。これらは払っても払わなくても売上は発生すると言えるため、場合によっては事業との関連性がないものが経費として計上されてしまうことがありますが、これらの費用がなければ、売上を作るための時間を確保できない、作業を効率化できないなど、売上との関係性が密接であれば経費となる場合があります。
注意 経費計上は「何でもあり」でも「極端に控えめ」でもNGです。積極的すぎると税務調査リスクが、消極的すぎると余計な税金を払うことになります。迷った場合は専門家の意見を聞くことで、適正な経費計上ができるようになります。
重要 経費とするかどうか、自分の中での判断基準を磨くことが非常に大切です。
販売費
販売費とは、営業活動に支出した費用のうち、商品の販売に関連して発生した、製造原価には含まれない期間対応の間接的な費用です。
| 費用 | 内訳 |
|---|---|
| 旅費交通費 | 店舗せどり等で遠方のお店に仕入に行った際にかかった交通費等 |
| 外注費 | 納品代行や出品代行等、オークションサイトに出品する際に荷物だけ送って出品作業を代わりにやってもらうために支払った費用 |
| 消耗品費 | 商品を発送する時の梱包資材や事務用品 |
| 接待交際費 | 売上に結びつけるために取引先の方を接待した費用で、自分の売上獲得に間違いなく影響があると言える人をもてなした、接待した場合のみ経費として計上できます。単に仕事上の関わりがあるといっただけの弱いつながりでは経費として認められないことがあります。 |
警告 接待交際費はプライベートと混同されることが一番多い科目の為、税務署は税務調査の際に接待交際費を必ず見ます。
一般管理費
一般管理費とは、製造原価に含まれない間接的な費用で、事業主の一般管理業務に必要な事業全体の運営に貢献する費用のことです。
| 費用 | 内訳 |
|---|---|
| 給料手当 | 本人以外の誰かを雇った場合に支払う報酬 |
| 地代家賃 | 自宅を事務所として利用している場合は、事業利用分とプライベート利用分に経費を割合などで分ける必要がある。自宅とは別に事務所や倉庫を借りている場合は、全額経費となる |
| その他(通信費、電話代、郵便代、水道光熱費) | 事業の為に利用している場所の電気、ガス、水道等、銀行の振込手数料や住民票の取得費用なども経費として認められる |
必要経費の算入時期
必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額で、その年に支払った場合でも、その年に債務が確定していないものはその年の必要経費になりませんし、逆に支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。
ポイント 「その年において債務が確定している」とは、次の3つの要件をすべて満たす場合
- その年の12月31日までに債務が成立している
- その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
- その年の12月31日までに金額が合理的に算定できる状態である
家事関連費の注意点
自宅を事務所として使用している場合、家賃はプライベート部分と事業部分に分けることができます。しかし、この場合の基準には明確なルールはなく、各自の判断に任されます。一般的には、家賃や事務所使用料を半分ずつに分けることが多いですが、より正確に分配する場合は、面積や日数で分けることもできます。
家事関連費とは
個人事業主の業務においては、家事関連費と呼ばれる、1つの支出が家事上と業務上の両方に関係がある費用があります。(例:家賃や水道代、接待交際費)プライベートと事業が半々の場合、支払いが全て100%事業とは限らないため、事業割合や経費の配分を行う必要がございます。
事業使用割合の適切な設定方法
税務署や専門家に相談して、適切な基準を設定してください。仕事で使用している部屋の面積が自宅の全体の何パーセントなのか、または1週間のうち何日働いているかなどを考慮して合理的な基準を立てる必要があります。
警告 事業割合が半分を超える場合には、明確な理由を示す必要があることが多いので、注意が必要です。
経費計上の具体的なケース

個人事業主といっても様々な業種が存在し、同じ支出であっても事業の種類によって経費になるもの、ならないものがありますので注意しましょう。例えば、建設業の作業着や工具代は経費として認められますが、同じ費用をプログラマーが経費計上することは、仕事に必要不可欠なものではないため、経費にはならない可能性があります。あくまでも事業に密接に関連しているかどうかが重要ですので、支出の内容だけで判断しないように注意してください。
重要 最終的には税務署によって判断されますので、税務署もしくは税理士に相談して判断を仰ぐことが必要です。
業種によって経費になるもの・ならないもの
事業の性質によって必要経費の内容は大きく異なります。同じ支出でも、ある業種では必須の経費として認められる一方、別の業種では認められないケースがあるため、業種別の特性を理解し、自分のビジネスに適した経費計上を行いましょう。
業種特有の必要経費
- **建設業:**作業着や工具代などが必要不可欠な経費
- **医師:**医療器具や薬代などが経費となるが、自身で使用する薬剤や器具は経費にはならない
- **プログラマー:**システム開発費やサーバー代が経費
- **俳優や役者:**衣装代や美容代が必要不可欠な場合もある
- **UberEatsの配達員:**自転車やリュック代は経費になるが、自転車を趣味で購入した場合は経費にはならない
- **転売業者/せどり業者:**ツール代や梱包資材代は経費になるが、事業と関係のない費用は経費にはならない
- **ホスト/キャバ嬢:**化粧品代や衣装代が一部経費になる場合がある
- **YouTuber:**企画によって商品購入が経費になる場合もあるが、租税回避行為とみなされる場合もあるため、注意が必要
注意 スマカクでは経費計上できるかどうかの個別判断を行うことは出来ませんので、ご質問はお控えいただくようお願いいたします。
経費と認められるための証拠書類

税務署が経費として認める条件の一つが「証拠書類の存在」です。少額でも必要な領収書・レシートの取得と保管、そして注意すべきポイントを解説します。
重要 証拠書類は「原則7年間の保管」が義務付けられており、法律で定められています。
保管義務と重要性
うっかりレシートを捨ててしまったり、払ったことは覚えているけど領収書がどこにあるかわからなくなった、あるいは請求書はいらないと思っていて貰わなかったなど、このような事態は危険です。また、領収書やレシートを管理するのが面倒だからといって受け取らないというのはNGです。事業主として、どんなに少額の支出であっても事業と関係があるのであればしっかりと書類を受け取ることが重要です。
重要 スマカクに証拠書類をご提出いただく必要はありません。これらの証拠書類は個人で保管する義務があります。必要な場合に備えて、簡単に見つけられるように整理し、後で見返してもわかりやすいように、空いた時間に書類を整理するなど、綺麗な帳簿付けにも気を配ることをお勧めします。
証拠書類に関する注意事項
振込履歴やクレジットカード明細書には、相手先の名前と金額が記載されていますが、内容がわからないことがほとんどですので、レシートやメモは必ず保存しておきましょう。
警告 クレジットカードの明細は証拠書類とならず、支払った相手先が発行した領収書が証拠書類となります。
帳簿・書類の保存義務
帳簿・書類の保存期間は種類に応じて定められています。また、青色申告と白色申告ではそれぞれ保存期間が異なるものがあります。
青色申告の場合
青色申告では確定申告で税制上の優遇措置を受ける代わりに、厳格な記帳と書類保存が義務付けられています。帳簿類や損益計算書などの主要書類は7年間、請求書や見積書などの補助的書類は5年間の保存が必要です。これらを適切に管理することで、税務調査にも安心して対応できます。
| 種類 | 保存が必要なもの | 保存期間 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 |
| 書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など | 7年 |
| 書類 | 領収書、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年 |
| 書類 | 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) | 5年 |
白色申告の場合
白色申告においても、一定の帳簿・書類の保存が法律で義務付けられています。収入や経費を記録した法定帳簿は7年間、その他の任意帳簿や証憑書類は5年間の保存が必要です。
| 種類 | 保存が必要なもの | 保存期間 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 帳簿 | 業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 |
| 書類 | 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 |
| 書類 | 業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 | 5年 |
注意 適切な記録管理は税務調査対応の基本となりますので、期間を守って整理・保管しましょう。
インボイス制度と電子帳簿保存法
インボイス制度が施行されたことにより、課税事業者の方はインボイスの保存義務が厳格化されました。手書きの領収書ではインボイスとして認められない可能性がありますので、事業として領収書を受け取るときは相手がちゃんとインボイスを発行できるのかどうかを事前に確認する必要があります。
重要 ご自身がどのように影響を受けるか、インボイスの登録は必要かどうか等しっかり勉強して判断をする必要があります。
インボイス制度
インボイス制度は2023年10月1日から施行されました。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は2024年1月1日から施行され、証拠書類の保存ルールが変わったためデータで受け取った書類は紙での保存が認められなくなりました。全ての事業主が対象の為きちんと理解する必要がございます。
個人事業主が注意すべき非経費項目

事業に関係があったとしても経費にならないものがあります。これは制度上経費にできないものですので、必ず覚えてきましょう。
経費とならないものの具体例
生計を一にする配偶者その他親族に払う地代家賃
土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。親族同士で家賃を支払っていても、実質的には家族内でお金が循環しているだけですので、家族間での資金移動は当然経費として認められません。**逆に受け取った人も所得としては考えません。**ですが、青色専従者や白色専従者控除といった要件を満たす人は、給料が経費になる場合があります。
所得税・住民税
所得税と住民税は経費にできませんが、消費税や事業税、固定資産税や自動車税等は経費になる場合があります。
注意 税金によって経費となるものならないものがありますので注意しましょう。
罰金、科料及び過料
経費に罰金を計上することで、罰金を支払うことに積極的な人が出る可能性がありますが、罰金は制裁であり、経費に計上して減税することで、制裁の意味が失われてしまいます。
公務員に対する賄賂など
犯罪行為は当然経費になりませんので絶対にしてはいけません。
期末商品棚卸高(期末在庫)
在庫は売れた時点でのみ経費計上できるため、期末の在庫や利益対策で購入した商品も、未販売の場合は経費になりません。AmazonのFBA在庫も同様です。過剰在庫はキャッシュ減・利益増につながるため注意が必要です。
ポイント 黒字倒産の原因
在庫を過剰に抱えている場合、いわゆる「黒字倒産」(売上はあるのに利益が出ておらず、お金がない状態)に陥ることがあります。「期末の在庫は経費にならない」ということ、「過剰在庫はキャッシュが減少し、利益が増える」ということを覚えておいてください。
重要 スマカクでも期末の在庫表は提出必須ですので、在庫については常に意識してください。
事業経費には算入されませんが、確定申告の際には、生命保険料控除、社会保険料控除、地震保険料控除、医療費控除など、所得控除として利用することができます。なお、申告はご自身で行う必要があります。
必要経費の見極めが重要

個人事業主にとって、何を経費として計上するかの判断は収益に直結する重要な課題です。適切な経費計上は正当な節税につながりますが、誤った判断は税務調査や追加納税のリスクを高めます。
重要 ビジネスとプライベートの境界が曖昧になりがちな個人事業主だからこそ、必要経費の正しい見極め方を理解することが、安定した事業運営の鍵となるのです。
節税と浪費は紙一重
『節税と浪費は紙一重』とよく言われます。経費を払えばそれだけ利益は減り、利益が減ればそれだけ税金は安くなりますが、税金を安くしたいがためにいらないものや無駄なものをたくさん買って経費にしてしまうと、結局のところキャッシュはなくなってしまいます。経費を作るために沢山購入した場合、使った分だけお金はでていくため、不必要なものを買ってまで節税を行うのはただの無駄遣いとなります。
アドバイス 税金を減らすためには、できるだけ無駄な経費を使わずに済ませることが大切なため、本当に必要なものを見極め、必要な経費のみを購入するように心がけてください。
所得税の税率
日本の所得税は超過累進税率を採用しております。利益に対して最低5%〜最大45%の税率となっており、所得がそれほど高くない場合は10%、20%、30%となります。つまり、税金を払っても半分以上は必ず手元に残ります。
警告 税金を払うお金がないと言うことは利益を使い過ぎている、プライベート利用が多すぎるということが言えますので、税金を払えない状況は非常にピンチだということです
税務署の審査基準
税務署が見るポイントの一つとして収入と経費のバランスがあります。業種に応じて、それぞれの利益率が一定額決まっているため、経費が多いと不自然に見えたり、「なぜ赤字なのか」と疑われたりすることがあります。普通にやっていれば儲かるはずなのに、異常に赤字を出してしまっていると怪しまれる可能性もあります。
アドバイス 適切な経費計上と一般的な利益率を意識してみましょう。
まとめ

経費の基準の考え方として、その支出がきちんと売上に密接に結びつくかどうか、きちんとそれを説明できるかどうかが重要なポイントとなっております。
注意 SNSで「簡単に経費にできる」という怪しい情報を見かけることがあります。たまたま調査が来ていないだけで**『自分が指摘されていないからOK』**という危険な考えで発言されている可能性がありますが、こういった情報に惑わされず、経費の原理原則を理解した上で、正しい経費計上を心がけましょう。
- 税理士視点での法人と個人事業主 - 2025年8月15日
- 年末調整の裏側と税金のカラクリ - 2025年8月5日
- 税務調査の実態とは - 2023年9月15日

この記事へのコメントはありません。