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貸倒損失の計上要件

商売を行っていると、売上代金が後からまとめて支払われることがあります。

この後でもらう代金のことを会計では「売掛金」と呼び、法律用語では「売上債権」と定義されます。

取引先に問題が無ければ一定期間ごとに売掛金の入金が行われますが、取引先に資金繰りや事業に関する問題が生じると売掛金が入金されないことがあります。

このような出来事に直面した場合、どのような行動をとれば良いのでしょうか。

Contents

目次

貸倒損失とは

売掛金が一時的に入金されず、数日遅れで入金されるのであればいいですが、数ヶ月、場合によっては年単位で入金がされないこともあります。

未入金の状態が継続し、売掛金が入金される見込みがなくなった時には、その売掛金を回収不能として切り捨てて損失を計上することができます。この損失を「貸倒損失」と呼びます。

⚠️ 重要
貸倒損失は事業の存続に係る多大な損失を与える可能性があるため、早急に対策を考えていかなければなりません。

一般的な貸倒損失

通常であれば企業が事業継続が困難になったときは、会社更生法や民事再生法などの法令に基づいて、弁護士や裁判所を介して法的な債務整理を行います。

法的に債務整理が開始されますと、売掛金やその他の債権はその会社の残余財産を債権額の割合で按分した金額で分配されることとなり、全額回収される見込みはほとんどなくなります。

このように正規の手続きにより回収不能額が確定した時点で初めて、**「売掛金の減少=貸倒損失」**が計上されることとなります。

貸付金

税法では**「事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権」「貸金等」**と定義しております。

つまり、売掛金だけでなく事業に関する貸付金も貸倒損失の範囲に含まれることになります。

損失の確定

「回収不能額が確定するまでは利益が計上される」ことになりますので、裁判や債務整理が長引くと損失の計上が遅れます。

📝 重要なポイント
「損失が確定するまで」は利益があったものと見なされ、納税しなければなりません。これが事業者にとって、売掛金の最大のリスクポイントになります。

貸倒れの損金算入要件

貸倒れが発生した場合、事業経営に係る影響が予想できるため、回収不能の定義を正しく理解して「損失を確定」させなければなりません。

📌 法的根拠
回収不能の論点については、所得税法第51条第2項で定義されています。

所得税法第51条

2 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

貸金等の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ

個別の論点については所得税基本通達〔貸倒損失〕にて解説されています。

所得税基本通達51-11

貸金等について次に掲げる事実が発生した場合には、その貸金等の額のうちそれぞれ次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。

  1. 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があったこと。
    これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
  2. 特別清算に係る協定の認可の決定があったこと。
    この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
  3. 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられたこと。
    その切り捨てられることとなった部分の金額
    • 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
    • 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が上記に準ずるもの
  4. 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知したこと。
    その通知した債務免除額

📝 説明
これは「法律的に債権が消滅している」状態です。いわゆる会社更生法や民事再生法などの法令に基づいた債務整理を行った場合が該当します。

回収不能の貸金等の貸倒れ

所得税基本通達51-12

貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、当該債務者に対して有する貸金等の全額について貸倒れになったものとしてその明らかになった日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできない。

📝 説明
これは「実質的に債権が消滅している」状態です。法的な破産状態になくても、財務諸表などから支払能力が無いことが証明できれば貸倒として計上できますが、実際には財務諸表が入手できないことが多いのでこの方法での貸倒損失の計上は困難が予想されます。

一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ

所得税基本通達51-13

債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下この項において同じ。)の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れになったものとして、当該売掛債権に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。

  1. 債務者との取引の停止をした時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時より後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上を経過したこと(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)。
  2. 同一地域の債務者について有する売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないこと。

(注)1.の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

📝 説明
これは「形式的に債権が消滅している」状態です。最後の取引から1年経過しても入金がない場合は備忘価額=1円を残して残りの金額を貸倒とみなして損失に計上することができます。

⚠️ 注意点
ただし、これは「売掛金に限定されるため貸付金は対象外」となります。継続的に取引を行っていた事が条件となりますので、たまたま取引を行ったという場合には該当しません。

せどり・転売における貸倒損失

せどりや転売のように、商品を売買する事業では売上代金に対する利益率が低く、原価が生じているため貸倒損失が生じたときのリスクは非常に大きいです。

逆に、コンサル業や士業のように成果物がモノではないサービス業は利益率が高く、原価があまりかからないことから貸倒損失のリスクは低いとされています。

取引相手による貸倒損失のリスク

物販は貸倒損失が生じたときのリスクが高いことがわかったと思います。

個人との取引(BtoC)

Amazonやフリマアプリなどの「個人向けの販売」であれば、1件あたりの金額が大きくなるケースはあまり多くありません。

✅ メリット
貸倒のリスクが分散されることで、大きなリスクとなることは少ないでしょう。

事業者との取引(BtoB)

買取屋などの事業者間では大きい金額での取引となりがちです。

あらかじめ決められた金額と数量で購入する約束のもと、時には数百万円、数千万円単位の高額な商品を発送することもあります。

⚠️ リスク
資金力に余裕がある買取屋であれば一定期間で入金をしてくれますが、中には事業継続が困難となり適切な支払いを行うことなく倒産するケースもあります。

買取屋との取引の売上認識

買取屋に商品を発送して売掛金が未入金となっている場合はどうなるのでしょうか。

棚卸資産を譲渡、つまり商品を発送した時点で買取屋との売買契約の合意がされているため、**「発送とともに売上を計上する必要」**があります。

通常は入金額をもって売上としても差し支えありませんが、入金が確認できない場合は請求書(買取依頼書等)より債権額を確認します。

✅ 重要ポイント
売掛金を回収できていなくても売上は認識しなければならず、その利益に対する税金も払わなければなりません。

メリット・デメリット

買取屋はあらかじめ合意した金額と数量で商品を買い取ってくれます。

確実に買い取ってくれる反面、同じ商品であれば他の販路よりも価格は安くなりがちです。

💡 メリット
売れるかどうかわからない在庫を抱えることなく売上が実現できますので、せどり・転売事業者にとっては大変ありがたい取引先といえるでしょう。

買取屋を利用することのリスク

買取屋からの売掛金を回収できなければそのリスクは一気に肥大化し、当然ですが仕入代金も支払うことが難しくなります。

仕入代金を支払えないということは今後の取引が継続できなくなる可能性がありますので、信用を失わないためにも仕入代金を何とか確保しなければいけません。

⚠️ リスク管理の重要性
金額が大きくなる分、その取引が滞留してしまうと資金繰りに重大な影響を及ぼします。「取り扱う金額がご自身のリスク許容度を超えていないか」「毎回取引がうまくいっているから大丈夫だと過信していないか」など、利益を得る反面でリスクがあることは事業者として当然つきまとうことから、リスク管理も自身の責任と考え、日頃から対策をしていきましょう。

貸倒が発生したときのスマカクの対応

取引先に貸倒が発生したときは、まずスマカクへご一報をお願いいたします。

📌 貸倒発生時の資料提出

  • 貸倒となった金額がわかる請求書等
  • 相手先が倒産、破産、更生等の状態になったことがわかる通知書

⚠️ 重要な注意事項
スマカクでは貸倒の要件を満たしているかどうかの判定はできません。ご自身の取引や相手先の状況が貸倒の要件を満たしているかどうかの判断は必ず税務署へお問い合わせをお願いいたします。

貸倒損失を計上するためのステップ

貸倒損失を計上するためには、上記で説明した要件を満たす必要があります。

次の1から3のステップでご自身の取引がどれに該当するかを確認していきましょう。

貸倒損失として計上する3ステップ

  1. 法律的に債権が貸倒となっているか確認
    相手先が弁護士等による債務整理を行っている場合は書面で証明できますので、比較的スムーズに処理が可能です。
  2. 実質的に債権が貸倒となっているか確認
    実質的に破産状態かどうかの判定は非常に難しく、財務諸表などで確認をする必要があることからこの方法での貸倒損失の計上は困難が予想されます。
  3. 形式的に債権が貸倒となっているか確認
    最後の取引から1年経過しても入金がない場合、1円を残して貸倒損失を計上することができます。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
    • 継続的な取引を行っていた
    • 貸付金ではなく売掛金である

参考:国税庁 – 貸倒損失

貸倒に備えた対策

自身で十分に注意したとしても避けられない場合があるので貸倒です。では、どのように対策をしていけば良いのでしょうか。

経営セーフティ共済への加入

倒産に備えた保障として最も有名なものは「経営セーフティ共済」です。

経営セーフティ共済は節税商品として紹介されることが多いですが、本来は取引先の倒産によって売掛金が回収できないときに、掛金の10倍までの借入れを受けることができる共済です。

💡 注意点
保障ではなく貸付ですので、返さなければいけない点はご注意ください。

借入れの条件

共済が定義する「倒産」に該当しない場合(「夜逃げ」など)は借入れができません。

また、経営セーフティ共済は掛金を引き出すことも可能です。

掛け捨てではないので万が一に備えて節税をかねて加入しておくのもよいでしょう。

共済金の貸付を受けられない場合

  • 取引先事業者の倒産が、共済に加入後6か月未満に発生した場合
  • 加入から取引先事業者の倒産の日までに6か月分以上の掛金を納付していない場合
  • 共済金の貸付請求が取引先事業者の倒産日から6か月以上過ぎている場合
  • 貸付請求時に、共済契約者が中小事業者でない場合(ただし、中小企業者の範囲を超えている場合でも、中小企業等経営強化法に基づく事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受け、その計画実施期間中の事業者は、中小企業者とみなします。
  • 貸し付けることになる共済金の額が少ない場合(50万円未満など)
  • 共済契約者が倒産または倒産に準ずる状況にある場合
  • すでに貸付けを受けた共済金の返済を怠っている場合
  • 倒産した取引先事業者に対し、売掛金債権等を有することになったこと、またはその債権の回収が困難になったことについて、共済契約者に悪意や重大な過失があった場合
  • 取引先事業者に本制度の「倒産」の事態が生じていない場合(「夜逃げ」など)

民間の売掛金保険への加入

貸倒に備えた保険が民間の保険会社から発売されています。

ただし、当然保険料を納める必要があり、せどり・物販のような業種であれば保証額も高額になることから保険料も高くなります。

薄利多売で利益がほとんど無いような状態で保険料を払うと赤字になってしまいます。

💡 参考情報
個人事業主が買取屋と取引するためにこのような保険に加入するのはあまり現実的ではありませんが、今後の参考として知っておくと良いでしょう。

民間事業者が販売している売掛金保険の例

⚠️ 注意点
経営セーフティ共済は掛金を将来引き出す事もできますが、民間の保険は原則掛け捨てになります。そもそもこのような保険に入る必要がないよう、信頼のおける取引先と取引を行うことが重要となります。

売掛金の時効

民法では**売掛金の時効は「5年」**とされており、未入金の状態で5年が経過してしまうと債権が消滅してしまうことになります。

5年以内に破産手続が開始された場合は残余財産の分配によって売掛金が消滅しますが、音信不通等で一向に手続きが行われない場合は自動的に債権が消滅してしまうので注意が必要です。

時効の更新/完成猶予

時効を迎える前に「時効の更新」または「時効の完成猶予」を行うことで期限を延長することができますが、この手続きについては弁護士等のサポートが必要となります。

ただ請求を続けるだけでは法的な効力がないため、正しい手順で時効を延長することが重要です。

参考:マネーフォワード – 売掛金の時効について

貸倒に備えて意識すべき事

貸倒は発生しないことが望ましいですが、ビジネスの中では避けては通れないこともあります。

万が一貸倒の被害にあったとしても困らないよう、いつ貸倒が起きても良いように事前の対策を講じておくことが重要です。

また、そもそも貸倒が起きないよう、リスクを回避する取引を心がけることが一番重要です。

リスク分散を行う

事業のリスクを軽減するために重要なことは「分散」することです。

投資でも同じようなことが言われますが、一極集中は成功したときのリターンが大きいですが失敗したときの損失も大きいです。

💡 重要な視点
リターンにばかり目を向けて、自分のリスク許容度を越えるリスクテイクをしていないか、冷静になって振り返るとよいでしょう。

買取屋リスクの対策

買取屋との取引は利便性が高い反面、一極集中したときの資金拘束リスクが飛躍的に上昇します。

取引に慣れてくると当たり前のように入金されるようになり、安心感から徐々に取引金額が増えていきます。

気づいたら自分のリスク許容度を超える仕入を行っており、資金繰りに詰まる直前までキャッシュフローを追い込む方もいらっしゃいます。

取引内容を精査する

複利効果を最大化するために元本と利益を再投資することは戦略としては有効です。

ただし、フリーキャッシュを吐き出して全資産を仕入に回してしまうとリスクに対応できないため、仕入に回せるキャッシュを設定しておきましょう。

チェックポイント

  • 万が一入金が遅れても仕入代金の確保は問題ないか(リスク許容度を超えていないか)
  • 相手先は入金遅延の情報が出ていないか(取引先にリスクはないか)
  • 同業他社と比較して不自然に買取金額が高くないか(取引内容にリスクが潜んでいないか)
  • 買取先は分散できないか(一極集中リスクを避ける)

⚠️ リスク管理
買取屋との取引は上記の項目をチェックしつつリスク対策をしましょう。

連鎖倒産

取引先のさらに上流にある取引先が貸倒となった場合、下流の取引先も被害を被ることで倒産につながることがあり、これを**「連鎖倒産」**といいます。

買取屋であればその先にある買取屋や問屋、卸業者、輸出業者、海外の購入業者などが想定されます。

取引先の親の買取屋が倒産しても、子の買取屋は代金を払わなければいいだけですが皆さんはそうもいきません。

支払いが行えない場合

クレジットカードなどで先払いをしている場合は、「売掛金を回収できないから支払いを待って欲しい」ということは出来ず、請求書後払いであってもその支払いから逃れることは難しいでしょう。

⚠️ 深刻な影響
支払いが行えないと、カードが停止されたり、CIC(信用情報)に傷がついて新規カードが作成できない、ローンが組めない、お金を借りられない、最悪の場合は自己破産など、事業のほかプライベートにも多大な影響が生じます。

⚠️ 資金繰りの重要性
キャッシュフローが行き詰まり、会計や税金どころの話ではなくなってしまいます。事業を継続するのであれば、まずは仕入代金を確保して再出発をする事が重要です。

貸倒が発生したときにやるべきこと

様々な対策を講じたとしても、どうしても貸倒が避けられないということもあります。

貸倒が発生したときにやるべきことは**「資金を回収すること」**です。

他にも買取屋から代金を回収できない債権者(事業者)はたくさんいるはずで、その人たちを押しのけてでも自分の代金は死に物狂いで回収するくらいの気概がなければ生き残れません。

自分が生き残ることを最優先に考える

うかうかしていると他の人に代金を先に支払われて、自分は後回しということも十分にありえます。また、裁判所が入って債務整理が開始されると、その時点で法的に回収が不可能となってしまいます。

こうなる前に自分の分を回収しておかないと手遅れとなってしまいます。

💡 事業者意識の重要性
こういう不測の事態に、消費者目線のままであったり、事業者意識が希薄であるとどうすればいいか分からず路頭に迷ってしまいます。

⚠️ 最優先行動
最優先にすべき行動は、「自己の債権額の保全」を行うことです。事業が継続できるよう、貸倒にあってもリカバリーできる規模の取引に抑えるなど常にリスクを考慮に入れながら事業を行っていきましょう。

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